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『100日後に死ぬワニ』はありそうでなかった作品

ツイッターで連載されていた漫画『100日後に死ぬワニ』が気になったので100日分一気読みしたえりです。感想を思いつくままに書いてたら全然まとまりのない文章になってしまいました(いつものことですが)。ネタバレする可能性があるので嫌な人はこの記事読まないでね。

まだワニくん読んでない人のためにリンク貼っておきます。

一気読みする人はこちらが読みやすいです。

(まとめ)日めくり漫画「100日後に死ぬワニ」【更新終了】
漫画家のきくちゆうき先生(@yuukikikuchi)がTwitterで連載中の、「100日後に死ぬワニ」をねとらぼでも日めくり掲載! トップページ右側で毎日最新話を更新していくほか、これまでに掲載した漫画はこの記事でまとめて読めるようにし...

作者のきくちゆうきさんのツイッター

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人の死をドラマティックに扱うと、だいたい感動的な物語になります。みんな大好きワンピースだって、言い方は悪いですが、効果的に主要キャラクターの肉親に死んでもらってストーリーを盛り上げるという手法を多用しています。

Mr.Childrenの『HERO』という曲の歌詞にこんな一節があります。

駄目な映画を盛り上げるために
簡単に命が捨てられていく
違う 僕らが見ていたいのは
希望に満ちた光だ

Mr.Children『HERO』

「駄目」とまではいいませんが、あまり安易に登場キャラを殺して視聴者や読者の感動を誘うのはちょっとズルいなと思ってしまいます。とは言いつつもやっぱりそういう話には感動してしまうんですけどね。

人の死をテーマにした作品は古今東西あらゆるものが存在します。とくに余命宣告された人の話や不治の病に侵されていく人の話はその典型でしょう。

『100日後に死ぬワニ』がそういった作品と大きく違う点は主人公本人が近々死ぬことを自覚していないという点です。余命宣告される系の話は主人公が短い余命を自覚しているので悔いが残らないように残された期間を過ごそうとします。

一方『100日後に死ぬワニ』は、読者には大々的に死ぬまでの日数のカウントダウンが示されているに、(100-n)日後に死ぬことを知らないワニは怠惰ともとれる日常を送っています。それによって強烈に日常の儚さを訴えてくるというのが新鮮に感じました。

さまざまな作品において登場人物が不慮の死を遂げるというのはよくあることですが、ほとんどの場合、読者もそのキャラが死ぬことを知らないわけです。キャラが死ぬときはたいてい死亡フラグを立てます。「これが成功したら…俺…彼女と結婚するんだ…」みたいなやつですね。

そのセリフの直後に死ぬことで、ドラマティックな展開を演出することができます。『100日後に死ぬワニ』の場合、読者はワニが絶対に死ぬというのが分かっているので、何気ないシーン全てが死亡フラグに見えてしまうというのが面白いなと思いました。

4コマ漫画はそれぞれのコマに起承転結を当てはめるのが一般的ですが、この作品は起承承承みたいなオチのない話が多いです。ほとんど何も起きてないのに死までの日数をカウントダウンされると何かを考えされられてしまうんですね。

・とくにやりたいこともなく怠惰に過ごす毎日
・突拍子もない夢を目指し一瞬で思い知らされる現実
・気になるあの子とのすれ違い
・着実に人生のステージを登っていく仲間に対して何にも打ち込めない自分

こういった多くの人が共感できる絶妙な「あるある」を散りばめることで読者を引き込んでいるのがうまいなと思いました。

『100日後に死ぬワニ』は日が進むごとにバズりまくって多くのファンを生んだのですが、ワニが死んだ後突然炎上してしまいます。最終話が投稿された直後に書籍化や映画化を発表して急にお金のニオイがし始めたため反感を買ってしまったのでしょう。

死を扱った作品は人の心を動かす力はすごいですが、それが金儲けに利用されていると思われてしまったときのマイナスイメージもとてつもないものがあります。

私は100日分一気に読んだので、それほど喪失感はなかったのですが、毎日リアルタイムで追っていた読者がワニくんの死の余韻にもうちょっと浸らせてよと思うのは無理もないです。

ただし、プロモーション戦略が初めから仕組まれた「電通案件」と揶揄されて炎上したのですが、私は電通案件だと騒いで作品への評価を替えてしまう人ほど、よっぽど広告戦略に踊らされている人だと思ってしまいますけどね。(炎上直後作者のきくちゆうきさんといきものがかりの水野良樹さんが電通の案件であることを否定しています)

主に嫌儲思想の人たちが騒いだことで炎上したのでしょうが、炎上したことにより作品がさらに注目されて関わっている人たちが余計に儲かるというのが皮肉なものですね。実際に私も炎上していなければこの作品を読むことはなかったかもしれません。

いきものがかりの楽曲について、100日目に突然脈絡もなく超有名アーティストが歌うテーマソングをアップするのってどうなの?って私も含めて多くの人が思っているはずです。戦略としてやや問題があったのは確かでしょう。

ただ、この配信でいきものがかりの水野良樹さんが

・この作品に感銘を受けて関わるようになった人たちの熱量がすごくて、本来曲をリリースするには無理なスケジュールをみんなの熱量で超えていった。

・関わる人達の熱量によって現場ではいろんな奇跡が起こっていたのだが、奇跡すぎてそれらの成果物を突然見せらた読者は「これは巨大組織によって仕組まれている」と勘違いしてしまった。

というようなことをおっしゃっていてなるほどなと思いました。オトナたちがテンションあがっちゃってノリでやってしまったことだというのが分かると少しほっこりしました。

『100日後に死ぬワニ』は作者のきくちゆうきさんがなくなった友人を題材にしていて、日常の大切さを考えるきっかけをあたえたいという純粋な想いから描いた作品なんだそうです。その想いが拙いプロモーションにより水を差される結果となってしまったのは残念と言わざるを得ません。

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